ホーム 教育CSR情報 教育CSR活動の事例紹介 魚醤の高温発酵過程における...

魚醤の高温発酵過程における微生物叢遷移の解析

2546
0

協和発酵キリン株式会社

高校を研究コミュニティの拠点とする新たな研究活動を通じて、次世代の研究者や産業を担う人材を育てる「東北バイオ教育プロジェクト」が2012年10月30日にスタートをきりました。参加が決定したのは、宮城県水産高等学校、岩手県立高田高等学校、福島県立新地高等学校の3校。各校とも未来の産業につながる可能性のあるユニークな研究テーマを構え、高校生が主役となって未知の研究に挑戦します。本プロジェクトは協和発酵キリン株式会社により実施されています。

barogange
魚醤の高温発酵過程における微生物叢遷移の解析

宮城県水産高等学校(宮城県石巻市)海洋総合科食品科学類型(2年生 25名)

 

水産高校名物、魚醤『宇田川乃露』に潜む微生物を探す

 魚醤とは、魚と塩を混ぜて発酵させて作る調味料のこと。日本では、穀醤より歴史が古く、紀元前3世紀頃にはすでに食されていたという記録があります。魚醤を作るうえで最も重要な発酵の過程は、魚自身がもつ消化酵素に加え、酵母・麹などの微生物の働きで行われており、通常は、30℃で約1年かけて熟成させます。一方、同校が作る「宇田川乃露」は、油谷教諭が開発した特殊製法を用います。それは、酵母や麹を加えずに、製造実習の際に発生するサンマの残さに30%濃度の塩を混ぜ、50℃の高温条件下で熟成させ、1ヶ月間という短期間で魚醤が作れるというもの。ひょっとしたら、この発酵過程で働く特殊な微生物がいるのでは?そんな疑問から、未知の研究が始まりました。

fig01tohokubio

 

bio02miyagi  biomiyagi01

 

 

『宇田川乃露』の高品質化を目指して

研究のスタート地点は、一般的な製法と水産高校の製法でできた魚醤に何か違いがあるのか?ということ。10月30日に実施した研究教室では、微生物とアミノ酸の解析を進めるべく、温度、塩濃度、酵母の使用条件を振り分け(表1)、6通りの製法で魚醤を仕込みました。これらを1ヶ月間発酵させた後、アミノ酸成分分析にかけてアミノ酸含量を測定します。さらに、発酵の過程において、各魚醤中の微生物の有無を判定するため、1週間ごとに微生物培養用の培地にサンプルをまいてコロニー形成を観察します。果たして、高温高塩濃度で作った魚醤には微生物が存在するのか?!そして、アミノ酸含量の測定結果はいかに?!水産高校の研究はまだ始まったばかりですが、この研究が魚醤の高品質化・高ブランド化の第一歩となります。

 

barogange

miyagiaburatani

宮城県水産高等学校 油谷弘毅 先生

 以前から魚醤作りを石巻専修大学と連携してやっています。地域を盛り上げたいという想いはあるものの、なかなか具体的に進められるきっかけがなく、これからの展開が難しいと悩んでいたところでした。震災があったからといって、しゅんとなっていても仕方がない。チャンスだと思って、よしやるか! と応募しました。生徒には、この研究を通じて、わからないことを自ら調べ挑戦することの大切さを伝えたい。将来別の分野の道に進んだとしても、研究した体験を思い出して自分の人生に活かしてほしいです。

(「教育応援」vol.16 2012.12より)
tohokubiobnr
kyowakirinbnr

返事を書く

Please enter your comment!
Please enter your name here