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国際化学オリンピックで競い高める好奇心

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ノーベル化学賞受賞者 野依良治先生

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国際化学オリンピックが2010年7月に日本で開催されることが決定した。現在、開催に向けての準備が本格的に始動しているが、今回、その組織委員長として陣頭指揮をとっている野依良治先生(理化学研究所理事長)に、国際化学オリンピックの意義や若者へのメッセージ、また化学の道を志すきっかけとなったご自身のご経験なども含めてお話を伺った。

 

Q:国際化学オリンピックと、その大会を日本で開催する意義を教えてください。

国際化学オリンピックは、1968年に第1回大会が東ヨーロッパの3か国で開催されて以来ほぼ毎年開催されてきました。参加国も年々増え、現在二百数十名の代表生徒が参加する規模になっています。日本では、2003年に代表生徒の派遣が実現して以来、大会主催のための検討を本格的に進めてきましたが、いよいよ2010年に東京で開催されることになりました。第42回の大会になりますが、世界約70か国から総勢数百人規模の代表生徒と役員が集まる、文字通り化学の一大祭典になります。このような機会に身近に接することは、次世代を担う高校生にとどまらず、広く一般の方々の化学に対する興味を喚起し、理解を深める絶好の機会です。そして、この中から将来の科学技術をリードする人材が育っていくことが期待されます。また、世界中から集まってくる、これからの化学を担う若者たちに、科学技術のみならず文化や風土といった日本の良さを直接触れて知ってもらうことも、オリンピックを日本で開催する意義といえます。これに加えて、代表生徒たちは、それぞれ国は違っても、皆意欲と能力のあふれる、そして好奇心旺盛な若者です。このような機会を通して、世界中に友達を増やしていってもらいたいと思います。それが一生の宝物になるはずです。

Q:先生が化学の道を志すようになったきっかけは?

幼い頃に大きく感動した2つの出来事があり、これらがその後の人生を方向づけるのに大きく影響しました。まず、湯川秀樹先生が、1949年に日本人として初めてノーベル賞を受賞されたことです。当時私は小学5 年生でした。実は湯川先生は私の両親と懇意にしてくださっていたということもあり、私の家ではこの受賞のことが毎日話題になっていました。それから、化学技術者だった私の父が、東洋レーヨン(現在の東レ株式会社)のナイロン製品の発表会に連れて行ってくれたことも、私にとっては忘れられない出来事です。ちょうど中学校に入る前の春休みのことでした。そのときの東洋レーヨンの社長の講演で「ナイロンは石炭と水と空気からできている」と聞き、それ自体はほとんど価値のないものから、あのような素晴らしい素材を創り出せる化学の力は、本当にすごい、将来は化学技術者になって、良い製品を作り世の中に貢献したいと思うようになりました。

Q:現在の中学・高校生に伝えたいメッセージをお願いします。

21世紀はグローバルな社会です。エネルギーや資源の問題ひとつとっても、世界の情勢をしっかり見極めながら、ときに厳しい競争にさらされる中で自立して生きていかなければなりません。その一方で、世界の人たちと協調してあたらなければ解決できない問題も、これからたくさん出てきます。日本は四方を海に囲まれている、世界に向かって開かれた国です。この環境を活かして、いかに広く国際社会に貢献する日本を創っていくか、広い視野でものごとを捉えながら、大いに活躍してほしいです。国際化学オリンピック日本大会のテーマは、”Chemistry : the key to our future” です。皆さんの手で、未来を拓く化学を創っていってほしいと思います。

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紹介:野依 良治(のより りょうじ )先生

化学者。工学博士。理化学研究所理事長、名古屋大学特任教授等。左右の手のように互いに鏡像関係にある光学異性体を選択的に合成する「キラル触媒による不斉反応」の研究が評価され、2001 年にノーベル化学賞を受賞した。

 

(「教育応援プロジェクト」vol.01 2009.2号より)<寄稿>

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参照Webサイト>>国際化学オリンピック2010(http://www.icho2010.org/top.html

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