世界初! 生きた人間の骨格の動きを忠実に再現したデジタル教科書
大阪大学大学院医学系研究科 菅本一臣教授 × チームラボ株式会社
歩いたり、走ったり、ジャンプしたり。私たちは体に200以上もある関節を複合的に使って動いています。運動の最中に関節がどう動いているのか?それはつい最近まで医学の世界でも明らかになっていませんでした。大阪大学大学院医学系研究科の菅本教授は、世界で初めて生きている人間の関節の動きを明らかにすることに成功しました。
整形外科医として患者さんのためにできることを追求する
菅本教授がこの研究を始めたきっかけは、変形性膝関節症患者の人工関節によく起こる異変でした。70歳を超えるとほとんどの人が関節の痛みを感じるようになり、日本だけでも1千万人の患者が存在しています。症状がひどい患者には人工関節の手術を施しますが、何年か経つとまた膝が痛み出すことがあります。「レントゲンでは一見正常に見えているのに、なぜこんなことが起こったのだろう?」という疑問を持ったのが研究のスタートでした。膝の一部に偏った力が加わり、擦れているという予測はできるのですが、レントゲンでは判断がつきません。静止している二次元のデータからは、実際に擦れている現象を見ることができないのです。「立体的に動いている関節はどうなっているのだろう。研究しなければ」。菅本教授は研究の道に進むことを決意しました。
医学に衝撃を与えた研究成果
関節の動きを明らかにするために、菅本教授は、既存のX線イメージ画像やMRIの解析データをもとに、三次元的な関節の位置を正確に計算するコンピューターソフトを開発しました。コンピューターで計算された三次元のデータをパラパラまんがの要領でつなげ、立体動画を作り上げていきます。人体のあらゆる関節の立体的な動きを解明すべく、40人の研究者が10年間もの長い歳月をかけて、膝だけでも2000人分という膨大な量のデータを解析し、ついに生きた人間全身の立体関節モデルが完成しました。生きている人間の皮膚や筋肉の収縮を加味しながら関節がどう動くかを解析した結果、驚くべきことにこれまでの解剖学の教科書の記述とは全く異なる動きをしていることがわかりました。「最初は解剖学の本を書こうと思いましたが、動画として見られたほうが圧倒的におもしろいと考え、チームラボと組んでアプリの開発に乗り出しました」。そして、2013年3月25日、3D人体解剖のipadアプリ「teamLabBody」が誕生したのです。
広がる応用方法
この研究成果は、整形外科等の病院での診断・診察や、義手・義足・人工関節等の医療器具関連メーカーなど医療分野での活用はもちろんのこと、教育、スポーツ、ロボット産業などへの応用も期待されています。「よく小中学校の研究室訪問の受入れをしますが、このアプリを紹介すると子どもたちは熱心に見ています。自分たちの体がどうなっているのか、興味を持っているのですね」。授業でもこの世界でオンリーワンの技術をぜひ活用してください。
最先端の医学がお手元に!人体解剖アプリ「teamLabBody」
詳細はこちら>> http://www.teamlabbody.com/3dnote-jp/