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教育応援企業の思い:ロート製薬株式会社

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先生との二人三脚で、

親を亡くした子の進学をサポート

東北の高校生が創造する新しい社会を夢見て

東日本大震災発生後間もない東北の太平洋沿岸に、河崎さん、阪本さん、吉田さんはそれぞれ降り立っていた。自分の中に湧いた衝動に突き動かされて現地までやってきてしまった。そこには言葉には言い表せない光景が広がっていた。確かに家や学校や駅があり、人間の営みがあったはずの場所は、一面瓦礫に覆われていた。

震災が起きた3日後の2011年3月14日、ロート製薬株式会社では復興支援室立ち上げの通達が発せられ、人員が公募された。その長として任命された河崎さんは、震災の影響で進学を諦めかけている子どもたちのサポートをしたいと考え、「みちのく未来基金」を立ち上げた。ロート製薬が先導をきり、カゴメ、カルビーと連携して行っている。これは、親を亡くした子に対する奨学金だ。これまで209名(1,2期生合計)を大学に進学させた。3社は企業の売上・利益にかかわらず25年間、毎年3000万円ずつ拠出することを決めた。これは、震災発生時に生まれた子が大学院を卒業するまでの期間、支援し続けていくことを示している。民間の企業が行う支援としては他にない規模だろう。「阪神淡路大震災が発生したとき、ロート製薬は水や食べ物などの支援だけで精一杯だった。やり残したことがあった。同じことを繰り返してはいけないと思った」と河崎さんは語る。

 

親を亡くした子どもたちにはそれぞれ複雑な事情がある。みちのく未来基金の力で進学費用の問題が解決したとしても、家族に代わって幼い妹弟の面倒を見、お年寄りの介護、料理、掃除、洗濯をこなしている生徒は、そう簡単には進学を決断できない。この地域の高校生にとっての進学とは、残された家族を故郷に置いて家を出ることを意味するからだ。そんな高校生の本音を聞き出し、夢を諦めるなと背中を押し、家族を説得できるのは、学校の先生しかいない。そのため、学校の先生との二人三脚で進めてきた。

 

震災をきっかけに変貌した高校生は多いという。震災以前は、「有名大学に入って良い企業に就職したい」というぼんやりとした希望しかもっていなかった子が、震災をきっかけに「自分を成長させて、地元のために働き、支援してくれた方々に恩返しがしたい」という想いと、勉学への強烈な欲求をもつようになった。「この彼らの成長の芽を育てるためにも、家庭の事情や費用を理由に進学を諦めさせてはいけない、この機会に僕らが何かをしないわけにはいかない。復興支援はこれからだ、瓦礫が片付いたら終わり、ではない。子どもたちの復興支援はこれから始まるんだ!」と河崎さんは言う。

 

次世代教育、進学への投資は、社会への投資だ。3.11をきっかけに、企業は社会に活かされているという事実に気づき始めた。「企業が社会に投資するのは当然だ」と河崎さんは考えている。復興を成し遂げるのは子どもたち。みちのく未来基金で育った彼らは、必ず社会に恩返しをし、新しい社会をつくってくれると確信をしている。だから彼らに投資をする。

 

ロート製薬復興支援室の希望はただ1つ。彼らが気兼ねなく勉学に励み、夢を叶えること。この基金で育った子どもたちが東北に、日本に、世界に、どんなイノベーションを起こすのか、そっと見守っていきたい。

 

(「教育応援」vol.18 2013.06より)

 

michinoku

 

 

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